考えてみれば、長い長い結婚生活を亜紀と一緒にやっていく自信があるだろうか？
自分に自信のない僕が亜紀を幸せに出来るだろうか？
僕は何がしたいんだ？亜紀と一緒にいたい。それだけか？やりたい事、゛夢゛…なんだろう？
…僕は、一人前の男になりたかった。欲張りな夢ではないはずだ。誰にも文句を言わせない、自律した大人に。
亜紀が好きで好きでたまらない。
だけど、亜紀を包むだけの人間性。僕は自分にそれを感じなかった。
浮気なんてしない。それは亜紀をこれ以上なく傷付けることだと分かっているつもりだ。
自分の夢を見つめなおす時間。それが欲しくなった。亜紀に追い付き追い越せるくらいの大人になりたかった…。
ある日、僕は正直に亜紀にそれを伝えた。
「…ありがとう。…私は、私のわがままであなたを縛っているのかもしれない。まだあなたには時間がたくさんあるんだから、やりたい事をやってみたほうがいいんじゃないかしら？」
「うん。」
亜紀はそう言ってくれたけど、生半可な事では駄目だ。心の中でそう思っていた。
そしていつものように背中を抱き寄せ、キスをした。
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