「あー、あのホラ…私のアパートからも見れるかなぁ。こんな景色。」
嘉代の言葉でふたりは目線を逸らした。
幸一は「麦茶」をとってくると言い、部屋を出て行った。
幸一の部屋には小学校の卒業式の日に撮った、嘉代と幸一のふたりの写真があった。
嘉代は大泣きしたまま写真に写っており、幸一は笑いながら嘉代を撫でている。
それを見て嘉代はひとりで顔を赤らめてしまった。
麦茶を飲みながら、幸一が引っ越した経緯や、嘉代が引っ越した経緯などを話した。
幸一一家が引っ越した理由に、病気を抱えた妹を養生させることがあった。
「最期まで病院だった。隣にアイツの部屋も用意されてて、中学に上がったらこっちに来る予定だった。」
隣の部屋には、住人に使われることが無くなった家具が、しっかり掃除されて残っていた。
幸一は遙か昔の話をするかのように穏やかな、どこか吹っ切れた表情で話していた。
「何でお前が泣くんだよ。」
幸一は微笑みながら嘉代を撫でた。
嘉代はいつの間にか幸一の腕を借りて泣いていた。
泣き疲れて眠ってしまった嘉代は、幸一の部屋に差し込んだ鮮やかな西日の眩しさに目を覚ました。