龍雅「俺はまだ死ねないんだぁああ!!!」
鬼の形相と化した龍雅はディア=パノスの五肢の補助ジェネレーターを解放した。
バーニアを全開させたディア=パノスはプロキオンに突っ込み、右の拳でプロキオンの胸部を貫破した。
鐵と鐵が摩擦する音はとてつもない高音を発しやがてそれは両パイロットの聴覚に影響する。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ互いの間を刻んでいた時間は停止したかのように思われ、その間龍雅はミラに対する様々な想いに胸を詰まらせた。
雷撃の如く、ミラとの想い出が蘇り、そして通り過ぎていった。
龍雅の目に一筋の涙が伝った瞬間、止まっていたかのような時間はゆっくりと動き出し、そのスピードを早めた。
時間は早さを取り戻したとしても過去を取り戻すことは出来ない。
そして龍雅の一筋の涙にはミラに対する懺悔の念が篭められるのみであった。
龍雅が我を取り戻した時、その目の前に胸部から左腕をえぐり取られ地に両膝をつくプロキオンの姿があった。
龍雅「うぅ…許せミラ…俺の心が弱かった…隙を作らなければお前を死なさずに済んだのに…」
「か…勝手に殺さないで?龍雅??」
罪悪感に討たれる龍雅を救う一報、それはまさしくミラの肉声そのものであった。
その瞬間、龍雅は歓喜の余り我を忘れて泣き叫んだ。
龍雅「み…ミラ!!!生きているのか!?本当に生きているのか??」
ミラ「あ…あなたは…強くなったよ…??兄さんの死を乗り越えたのよ?きっと…?私も…貴方のようにもう一度頑張りたい?…ねぇ、力を…貸して…」
龍雅「あぁ!!お前の為なら俺は…」
ミラの弱くか細くなった声に対し龍雅は自信にみちあふれた声を与えた。
「フン!!やはりその女もまた失敗作だったようだな…」
突然、ディア=パノスの頭部に一人のしゃがれ声の男が現れた。
それはまさしく黒いコートに黒いスーツで身を包んだ青髪の男、ハーツであった。
龍雅「ハーツ!!!貴様アアア!!!」
ハーツ「おやおや…。男性のヒステリーほど見苦しい物はありません。それにしても我々もなかなかいい人材に恵まれ無いものです…」
ハーツの発言の直後、周囲の地面が隆起し取り囲むように蠍型グルドの大群が現れた。