急に地下鉄がとまった。僕はうんざりした気持ちでアナウンスが流れるのを待った。
「ただいま人身事故が発生いたしました。発車までしばらくお待ちください」
僕は早く家に帰ってシャワーを浴びて、ビールを飲み、そしてぐっすりと眠りたかった。しかし、どれだけ時間が経っても電車が動く気配はなかった。隣のおじさんは携帯をいじっていた。電波はたつのだろうか。
「ねえ、あなた」いきなり僕に話しかけてきた。「どんな人身事故か知ってますか。なんでも人が電車の前に飛び出して来てぶつかったらしいですよ。きっと即死ですよ」
「そうですか」早く帰りたかった。
やっと電車が動き始めた。僕はいつもより少し遅めに家に着いたが、いつも通りシャワーを浴びた後、ビールを飲んでから寝た。
翌朝のニュースで昨日の人身事故の事が報道されていた。死者は1名。昨日のおじさんだった。