選手交代 殺生

 2008-08-08投稿
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足音が止まった

ギイー…

牢屋の扉が開いた
そういえば鍵がつけっぱなしだった
開いた先の暗闇の中に人影が見える
しかしそれ以外何も把握できない
危険を察知し右手で包丁を強く握りしめた

恐らく自分は今から何かを殺さなければならない

さっきのテレビの中の自分が言う事を信じるなら

コツッ

人影は一歩踏み出した
その一歩のおかげでやっと把握できた相手


…私…?


どうやら泣いているようだ
うつむいたままもう一歩踏み出した
顔を上げた
やはり自分だ
今日の朝鏡で見た自分と同じ顔をしている
だが髪はぼさぼさで着ているドレスのような布もぼろぼろだ
「あんだのぜいで…」
ひどくかすれた声で突如話し出した
「なんであんだみだいなぢゅうどんばなやづがいぎのごらなぎゃ…」
「何を言ってんの…全然わかんないよ…」
「わだじだぢのごどをわずれだど…くくく…くく く…」
泣きながら笑っているもう一人の自分は異常な雰囲気をかもちだしている
おもわず自分は相手から一歩引いた
その瞬間
物凄い勢いで自分に飛び掛かってきた
「ぶざげるなっっ」
相手の右手にカッターナイフが見えた

殺される

自分は何かにつまづき床に叩きつけられるように転んだ
そのおかげでカッターは自分の前髪を切っただけだった
相手は勢いのまま牢屋の柵にぶつかった
自分は足音を見た
右足に赤い糸が絡まっていた
自分の胸から伸びる糸に救われたようだ
立ち上がり包丁を構えた

なんだこれ…

意識とは関係なく体が勝手に動く
体は相手に向かって行く
さっきのテレビの時と同じ…
倒れて苦しんでいる相手の首に体が包丁をあてた

やめて…

「またぎざまにやられるのか…ぶざけるな…」
「だまれ きさまに譲る気などない」
口まで勝手に動き出した
やめてやめてやめてやめてっっ
何かに体を乗っ取られている感覚だ
「今回も表に出るのは私だ 貴様はここで大人しくしてろ」
自分は何を言っているのだろう…
「ぐ…まだづぎがある…ぞのどぎは…」
体は包丁を強く首に押し付けた
そのまま下にすっと下ろした
目も塞げなかった
鮮やかな赤で視界が塞がれた
意識が飛んだ



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