「ありがとうございます」マギウスはそう言って、頭を下げた。
「礼には及ばん」
エリウスは苦笑しながら、マギウスの部屋から出ていった。
「…」
マギウスはエリウスが出ていった瞬間、唇を噛んで、拳で肘掛けを叩いた。
失敗するとは…やはり、色々な条件を呑んでしまったのがいけなかったか…。まあ、所詮は捨て駒だ。どうにでもなる…―\r
マギウスは邪悪な笑みを浮かべながら、椅子から立ち上がって、部屋を後にした。
「よいか。ぬかるでないぞ」
「はっ…」
エリウスの潜めた声に頷き、黒ずくめの男は静かにその場から立ち去った。
「…ふう…」
エリウスは一つ小さく息を吐くと、薄暗い小屋の中を鋭い眼差しで見つめた。
マギウスよ…お前の思う通りにはさせんぞ…。この国を混乱に陥れる事は、あってはならんのだ…―\r
そう思いながら一つ大きく肩を揺すると、エリウスは無言のまま、その薄暗い小屋を後にした。
「本当に行くのか?兄さん」
「無論だ。息子を捜しに歩くのも、親の責務だよ」
心配そうに見つめるセイルに、ライルは小さく笑った。
「セイル、もしもロイがここに戻ってきたら、『メイル』で知らせてくれ。暫くは砦にいるかもしれんからな」