「分かった。…でも、万一の事があったら絶対無理しないでくれよ、兄さん。悲しむのは息子さん達だけじゃないんだからさ…」
「…ああ、分かってるよ。それじゃ、後は頼む」
ライルは見送りに出たセイル一家に軽く手を振ると、そのまま町の出入口へと歩いて行った。
「お義兄さん、無事だといいわね…」
サリアはその後ろ姿を見つめながら、心配そうに呟いた。
「ソードメーカーとしての腕はこの国の中でも飛び抜けてるからね。大丈夫だとは思うけど…」
セイルは不安気な眼差しをライルの後ろ姿に向けながら、一つ小さく息を吐いた。
「…」
その二人の後ろで、エミリアは唇をぎゅっと噛み締めて、苦悶の表情を浮かべていた。
「どうしたの、姉さん?」ミリスはその様子に気付いて、不思議そうな顔をした。
「…何でもない」
エミリアは首を振って、静かに目を閉じた。
エリグラム砦までの道を歩きながら、ライルは腰に提げた剣に手をやった。
何だ?―\r
ライルはしきりに首を傾げながら、砦に近づいていくごとに増していく強大な魔力を感じとっていた。
「っ!」
砦まであと少半分という所まで来て、ライルはフードを被り、全身をマントで覆った人物が待ち受けているのが見えた。