銃を持った私兵に追い掛けられたことも有った。それもまた、いい思い出ではある……僕にとっては。海潮はどうか知らないけど。
「拳銃で撃たれる経験なんてそうそう出来るもんじゃないよね」
「思い出させんなよ。当たらなかったからいいものを、一歩間違えてたら死んでたんだぜ?」
「そこはそれ。先輩がいたから、何とかなるかなって」
「お気楽な脳みそだな、全く」
「で、いよいよ活動再開ですか。当局に睨まれたから暫くは控えるって先輩は言ってたけど」
思い出すのはゴールデンウイーク五日目。部室で機材を準備する僕ら。乗り込んできたのは若い警官と壮年の警官の二人組。慌てふためく僕らと違い、先輩は胸を張って相対した。言い争い、激昂し胸倉を掴み上げた若い警官に対して、手を払いのけながら一言――「逮捕状は有るんですか」。何処で作られた一昔前の刑事ドラマですか、と聞きたくなったのは僕だけではないだろう。その後、嫌味たっぷりに警告して帰っていった警察を出し抜き、見事大物政治家の不正を暴いた訳だが(因みに、若い警官と一緒にいた壮年の警官もその政治家に目を付けていたらしい。先輩との裏取引も有ったとか無かったとか)流石に常軌を逸した行為を咎められ、警察からは自粛命令が出たとかなんとか。おかげでこっちは退屈な毎日を送る羽目になってうんざりしていところだ。揚句に大怪我まですることになるし……いや、自重しなかった僕が悪いのか。
とまれ、そんな部活動に僕は参加している訳だけども、それが約一ヶ月半ぶりに再開することになった。で、次は何するかと会議を執り行い決議を取った結果がプリントには記載されているらしい。それは、なんというかまあ。
「お疲れ様」
「ホントだよ」
あの先輩と二人きりでディスカッションとか……想像するだに恐ろしい。きっと海潮はロクに発言も出来ず、出来たとしても向こうに都合がいいような発言を強要され、結果、望まないスケジュールが組み上がってしまったに違いない。哀れな。
「で、今度は何するって?」
海潮には悪いと思うけれど、僕はこの活動を楽しみにしている。だから自然と声は弾んでいて、そこから海潮は僕の心情を汲み取ってくれたのだろう。プリントを読ませれば良いものを、わざわざ話を合わせてくれる。良い奴だな、海潮は。
「ちょっと前からネットで噂されてる話なんだけどな――――」