「ふーん。」
正面に座る人物から声をかけられ、一応返事をした。
なんか、ニュースのお天気お姉さんの声とかぶってよぉ聞えへんかったわ。
『今日は晴れ!洗濯日和ですよ―』やて。
後で干しとこ。
にしても、やっぱり朝は“納豆かけご飯”やな。
納豆キライて言う奴、ほんまに有り得へん。
粘りきいててめちゃ美味・・・ちょお待て。
「サイコンて・・・あの再婚か!?」
ご飯を口に入れかけたところで箸を止めたせいで、豆が糸を引いて虚しく茶碗に逆戻りする。
この場合、こぼさなかっただけでも幸いか。
三宅空はその格好のまま、正面に腰掛ける、問題発言をした張本人に目だけをギロリと向けた。
今日は空の十八回目の誕生日であった。
さすがにこの歳になって、誕生日がはしゃぐほど嬉しいというものでもないのだが、「誕生日おめでとう」の言葉の前にそりゃ無いだろうと思う。
せめて・・・。
せめて、おめでとう言うてからにせえよ・・・。
はぁ、と深く溜め息をついて、空はがっくり肩を落とした。
空の視線から解放されたのを見計らって、三宅総太はそらしていた目を、深くうなだれた我が息子の方へチラリと向けた。
何を隠そう、総太は空の父親である。
今年で三十六歳。
総太が実年齢よりも若く見えるためか、兄弟とよく間違えられる。
初対面から親子だと認識されることはめったに無い。
空は、総太と妻の寧が十八歳の時に授かった子供だった。
高校生の頃、寧の妊娠が発覚。
大学を出て教師になる夢を諦めて、頭の良さを頼りになんとか地方公務員に就職し、これまで家族のために働き続けてきた。
ちょうど十年前、寧が病気で他界。
その時から男二人の生活はスタートし、順調に進んで来たはずだったのだが・・・。
「そうやな、その再婚やな。それはそうと、今日で十八やな。おめでとう、空君。」
「・・・もしかして、誕生日プレゼントがその再婚話やないやろなぁ?」
「いややなぁ、プレゼントは他に用意してるて。帰ってからのお楽しみってやつや!ははは!!」
「まさか、帰ってきたら家に再婚相手がいて、『プレゼントは新しいお母さんや!』とかアホなこと考え・・・」
「もー!そんな訳ないやろ!!妄想激しすぎやで、空君!!君、いつのまに妄想のプロに・・・」
「アホな事言うなや。あと、君付けもやめろ。キモチワルイ。」
「・・・ごめんなさい。」