「…ディック・ブラウンと付き合ってるんじゃなかったの?」
ヘレンがこう言うと、フレデリカは口を開けた。
「付き合っているけど」
「なのにどうして、ルークと? まさか、浮気」
横から又、スージーが割り込む。
「ディックと別れたいんだよね?」
「ディックの事、嫌いなの?」
「あんなゴリラ男とはもう、うーんざり!」
益々、不機嫌な顔をするフレデリカ。
強欲で乱暴、いつも喧しく命令口調のディックはフレデリカにとっては、ハッキリ言って顔も見たくもない存在である。
「そんなに嫌いなんだ。
でもどうして、ルークなの? あの男でなきゃ、駄目?」
「何よ、イケナイって言うの?」
「別に構わないけど…、あんな臆病でひ弱な男よりも他にイイ男はイッパイいるじゃない?」
「私はルークがイイの」
「どうして?」
「あの男、正直者だし。
私の言う事、何でも聞いてくれそうだから」
「自分が男の上に立って優越感に浸りたいんだ?」
「まあね」
ルナが情報を話した。
「ルークをモノにするんだったら、今のうちよ」
「今のうち?」
「キャサリンが暫く、学校来ないみたいだし。
何だか知らないけど、ルークとキャサリンは別れたらしいって」
スージーが指をパチンと鳴らした。
「だったらフレデリカ、今がチャンスじゃない?
今度の12月17日はルークの誕生日だから…」
────────
そして、12月17日…、
口の達者なフレデリカは言葉巧みにルークを自宅に呼んだ。
ゲストルームにはX’マスツリーが飾られている。
ルークは、メイド嬢の案内で部屋に通された。
部屋ではフレデリカが1人、ピアノを弾きながらルークを待っていた。
フレデリカのもてなしに、ルークは戸惑いを隠せない。
しかも、男心をくすぐるような大人っぽいドレスで着飾っているから、尚もドキドキ。
2人のメイド嬢が食事の用意を始めた。
「フレデリカ、他の友人たちは…まだ誰も来ないね?」
「ああ、ごめんなさい。
実は、他のコたちは用事が出来て来れない…って言うの」
「え? 誰も?」
「みんな、ルークのバースデーを楽しみにしていたのに…、とても残念がってたわ」
「あ、あっそう!」
勿論、フレデリカが言った事は真っ赤なウソ。
ルークは何も知らず、ドキドキ気分に浸るだけである。
つづく