いつもの世間話
笑い合ったり
時に真剣な話をしたり
受話器から聞こえるあなたの声で安心する
目を閉じて声を聞けばあなたが隣に居る気がして嬉しくなる
長い沈黙も好き
次に何を話そうか考えてる自分も好き
たまに聞こえてくる欠伸も
耳を澄ませば聞こえるあなたを包む周りの音も
全部好き
眠たそうな声に『もう切ろうか』と言うと
あなたはいつも『大丈夫』と言って一生懸命話を聞いてくれる
もう話すこともなくなってきたのに
ただあなたの声を聞いていたくて必死で会話を探す
いつの間にか時間が過ぎてあなたの相槌も声も薄れて行く
静かな中にあなたの寝息が聞こえる
『寝たの?』
私の問いかけに返事はない
何だか可笑しくて
何だか愛おしい
眠たいのに懸命に私に付き合ってくれたから
あなたの優しさに切なくなる
疲れさせてしまったのかな
私の声に安心して眠ってくれたならいい
『おやすみ』くらい言いたかった
この日の終わりの
今日最後の二人の挨拶
『おやすみ』
小さく独り言のように呟いた
相変わらずの静かな寝息
あなたが今隣に居て
その寝息を側で聞けたら
あなたの寝顔に触れることが出来たなら
そんなふうに思い
少し溜め息混じりに笑いながら
携帯をそっと閉じた