空を飛ぶ夢を見た。それは唐突だ。
授業中の居眠り。先生の話しと、ノートの中の文字。擦り減った紙やすり程度の価値しかない、擦り減った情報が踊っている教室。
そこで、ぼくは、空を飛ぶ夢を見た。
時間にすれば短く、でもそれはぼくにだけひどく長く感じた。クラスメイトは授業に集中したり、小声で雑談をしていたりする。それがぼくには非現実的に思えた。
平和だった。時間が滑らかに過ぎて、終わりそうな夏の空気は不思議な密度に保たれている。
→空、または夢の中→
オレンジや紫の光りが、濃い藍色の空を削っている。緩やかな丘のてっぺんに立つ僕は、辺りを見回した。
「どこだ?ここ」
不安を含んだ呟き。
当たり前の反応だ。学校で勉学に勤しんでいたと思ったら、夕暮れの丘に立っている。そりゃ反応は限られるだろう。あらためて辺りを見回す。人工物は何も無い草原。僕が見たことの無い風景だった。
「カッコイイ。カメラ持ってくればよかった」僕は、今自分がいる状況よりも写真を撮りたいようだ。
そこで、僕は気付いた。激しい違和感に。はたして、その原因は空だった。しかも、月。
やたら大きな月にクレーターは見えない。テレビ等で見る、地球にそっくりだった。単純な興味を持った僕は、よく目を凝らしてみた。
夜の部分に、光っている場所がいくつかある。電気の光りだろう。
そうやって、いろいろ観察しているうちに日が暮れた。
夜の訪れだ。どうやら地球以外の惑星で、なぜか一人ぼっちの夜だった。