だが、攻め込んでいる筈のフリースユニオン側も事態は深刻だった。
彼等は確かに消耗戦を仕掛けていたのだが、実際にはその予想を遥かに上回る消耗振りだったのだ。
三叉矛作戦開始時に準備された戦力は、僅か三ヶ月で完全に消費されてしまった。
当初の計画のそれは三倍のペースだった。
特に、一番酷かったのはギャームリーグ三宙邦本国を正面から直撃する《紅夷大砲作戦》のアイアン=トライアングル戦線だった。
備えは万全と彼等は慢心していたが、考えて見れば、長い戦間期にギャームリーグ側にも思う所有って、パワーアップを図っていた事までには迂濶にも思い至らなかったのだ。
改造成ったアイアン=トライアングル主力兵器《三鬼眼》システムには、敵の防御磁膜を無力化しつつ、出撃した味方の艦隊は完璧にカバーする対抗兼援護振幅転送システムと言う、派手さには欠けるが脅威さではそれ以上の新たな機能が追加されていた。
侵入を図る相手は丸裸にされた上、恒星間戦略砲の業火を情け容赦なく浴びせられ、おまけに分厚い防御磁膜で守られた迎撃部隊に残らず沈められるのだからたまった物ではない。
早くも銀河元号一五四二年新年期明けには、この方面のフリースユニオン軍総司令官マールバラ宇宙軍元帥が旗艦もろとも吹き飛び、戦線は壊滅状態になってしまった。
ギャームリーグ軍の意外なまでの頑強な抵抗に遭って、早くも迷信的な恐慌を来たしたフリースユニオン=宇宙解放連盟は、残された希望の全てをガニバサ率いる迂回部隊に託すしかなかった。
だが、そのネオフリートとの連絡は、同一五四二年第一期一0日(修正太陽暦一月一0日)には、完全に途絶えてしまった。
予測されていた事とは言え、唯一頼りになる精鋭部隊とのコンタクト喪失は、当然フリースユニオン主力を精神的に追い詰める要因となった。
それを見越したかの様に、ギャームリーグ機動部隊は反撃を開始した。
彼等とて敵の物量作戦から何も学ばなかった分けではない。
特に、無人艦による特攻と潜宙艦による通商破壊作戦は、どちらも低コストで甚大なダメージをフリースユニオンに加え続けた。
一時は全軍が産業船団から孤立する羽目にまで陥り、最早ガニバサがギャームリーグ後背に出現するのを待つ外ない事態が長らく続いた。
だが、そのガニバサは、中々出て来なかった。