翌日。
気だるさに襲われながら嘉代はベッドから起き上がった。
服を着替え、部屋の壁に目をやった。
春休み中は漁の手伝いを言いつけられている幸一のことだ。
嘉代が起きる頃にはもうとっくにいなくなっている。
その日はお使いを頼まれ、バスで隣町にあるスーパーまで行くことになった。バスは行き帰りで一本ずつしか出ておらず、これを逃すと嘉代には徒歩しか移動手段が無くなってしまうという恐ろしい町だった。
バスは一時間近くを要して隣町まで走るので、眠るにはちょうどよかった。
だが、若いバスの運転手は一人だけの乗客の嘉代にいろいろ話しかけてきた。
「都会から来たんだ〜。べっぴんさんだね〜。」
顔のわりに話すのは随分年寄りじみた言葉だ。
「運転手さんおいくつですか?まだお若いようですけど。」
「23だよ。まだ新米だけど、このバスの運転手は俺のほかに親父だけだから、仕方なくね。」
嘉代は人手不足に驚いたが、だんだん襲ってきた睡魔に負けてしまい、運転手さんの名前や趣味など少し興味のあったことを聞きそびれた。