何者かに言われた通り、正男は車にひかれそうになったコネコを命がけで助けた。
その時、正男は交通事故で死んだ両親のことを思い出し、涙が溢れてきた。こんなこと、生まれて初めてだ。
「母さんや父さんもこのコネコみたいに助かればよかったのに。」
久し振りに家に帰り、自分の部屋に入った。そして、鏡の前に立った。そこには、懐かしく思える自分の顔があった。そして、裸の姿があった。正男はまっかになった。目に涙を浮かべながら、
「あの声は、神様だったんだ。」
と、小さな声で言った。
正男は、両親や仲間の大切さを思い知った。
翌日、新聞の隅っこに、『猫、奇跡の生還』という見出しが載っていた。
数日後、正男のまわりを、たくさんの友達が笑って囲んでいた。
神様は、その姿を、笑顔で、いつまでも見つめていた。
ー終ー