僕自身が僕に語りかけてきた。それは突然の事だったので、僕はかなり面食らってしまった。
「なんで」僕は恐る恐る聞いてみた。「今になって突然語りかけてきたんだい」
「違うよ」今度は僕自身が面食らう番だった。「気がつかなかったのかい。僕は何度も君に語りかけてきた」
そう言われるとそんな気がするけど、こんなにはっきり声を聞くのは初めてだった。
「そう言われるとそんな気がするけど」僕は僕自身に聞いた。「こんなにはっきり声を聞くのは初めてだよ。なんで今になってはっきりと声を聞くことができるんだろう」
「それはね」僕自身は言葉を区切りながら答えた。「君が、今、僕を、必要としているからさ」
僕自身にそう言われるとそんな気がした。でも、なんで僕は僕自身を必要としているのだろう。さっぱりわからなかったが、だんだん質問するのも面倒になってきたので僕は僕自身にさよならを言って別れた。