奈央と出会えたから。<195>

麻呂  2008-08-17投稿
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『拗ねてる訳ねぇだろ。ガキじゃあるまいし。』



カチッ――



ぼそっと一言呟いた聖人は、煙草に火を点けた。



『奈央ちゃん。もう、コイツは天邪鬼と言いますかねぇ‥‥。

どうしてこう素直じゃないんやろな。

未成年の分際で、親の私の前で堂々と煙草なんぞ吹かしやがるし。

何てったって、私のバイクを無免で乗り回すんやからな。

恐らく、学校内でもとんでもないワルなんやろな。』



聖人のお父さんの言った言葉は、確かに正しいコトだとは思うケド‥‥‥。



聖人にだって、良い所がいっぱいいっぱいあるんだから。



だって――



聖人は決して“ただのワル”なんかじゃないし。



凄く――



他人に対して思いやりがあるし。



絶対に――



自分より弱い者を苛めたりなんかしないもん。





『おじさん。聖人は“ただのとんでもないワル”じゃないです。』



あたしは思わず呟いた。



『ははは。そうかぁ。分かった。

聖人‥お前、奈央ちゃんにここまで想われて、幸せなやっちゃな。

奈央ちゃんの事は、大切にしてあげるんやで。』



『さっきから、いちいちうるせぇよ。

親父にんなコト言われなくても、俺は奈央のコト、大切に思ってるし。』



そう言ったトキの聖人の目は、真っ直ぐあたしの目を見てた。



ずっとずっと、あたしの目を見てた。





『まぁ‥‥な。俺も聖人位んトキは、やんちゃやったけどな。

やっぱり“血は争えない”って言うけれども、ほんまにそう思うわ。』



そう言った聖人のお父さんの表情が、



少しだけ寂しそうに見えた。





『おっ。奈央。この里芋なんまら、うっめぇ〜〜!!』



聖人が、母の作った“旨煮”を食べながら言った。



『あは。ありがと。そう言ってもらえたら、お母さんも喜ぶと思う。』





『親父!!奈央の母さん、弁当屋で働いてんだぜ。

今度、昼飯んトキ、弁当買ってやれよ。』



不意に聖人が、思い出した様にそう言った。



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