少しずつ不信感を募らせていった理子は、ある日、「図書館に行く」と告げて、出掛けた哲也の後を、つけてみた。
結果、パチンコ店の中に、姿を消して行く哲也の後ろ姿に、理子は激しい裏切りを感じた。その激情は、彼女自身、押さえ堅いものだった。
それは、彼女の純粋さ故…… あるいは、若さ故のものだった。
2時間後、再び店の外に姿を現した哲也に、理子は激しい怒りの言葉を投げ付けた。
「図書館に行くなんて言って… 私に嘘をついたのね!! どうして、そんな嘘をつくの? 私は、もう、あなたの言うことなんか、何もかも信じられないわ!」「ねぇ…何故?……黙ってないで、なんとか答えてよ〜!」
真っ赤な顔をして、暫く、一言も発せなかった哲也が、苦痛に顔を歪ませながら、やっと、何か独り言のように呟き始めた。
「だって……君は、俺のことなんて愛していないんじゃないか? いや…俺も君も、人間の愛し方なんて知らないんだ…
他の大人だって、みんなそうさ… みんな愛なんてない…みんな、毎日、詰まらなさそうに、なんにも楽しくなさそうに生きてる… 酒や金で、自分を誤魔化してさ…… 今の大人を見て、これからの人生、前向きに生きようって気がするか? 理子だって、それを感じてるから、いつもそんな、どこか不安な顔してるんだろう?」