放課後、教室の掃除あきてきたK太が、そはにいたT男にむかって、「ねぇ、幽霊っていると思う?」
みょうに真面目な顔で声をかけました。
「わかんないよ。見たことないし。 どうしたんだよ、急に幽霊の話なんかもちだして。」
「ゆうべ、変な話をきいたんだ。」
「変な話って?」
二人が話しはじめると、まわりにいた仲間たちも掃除の手を休めて集まってきました。
「K太、その幽霊の話ってどういうの?」
M子がききました。
「自分の近くに幽霊がいるかどうかを判断する方法なんだ。」
「おもしろそう。どうやればわかるの?」
「夜、電気を消して部屋の中を暗くする。そして12時ちょうどに、左手に持った金属のスプーンを後ろに投げるんだ。」
「それから?」
「それだけ。」
「なんだ、そんなことで、幽霊がいるかいないかわかるの?」
「ああ。投げたスプーンの音がチャリンとしたら幽霊はいないけど、もし、音がしなかったらそばに幽霊がいる証拠だって。」
「へーえ、今夜やってみようかな。」
話が盛り上がったところに担任の先生がきたため、みんなはあわてて掃除にとりかかりました。
その夜、大変な事がおこりました。T男が急死したのです。実は、昼間の話をまねて夜中の12時にスプーンを投げたところ、音がしなかったたむ、人一倍おくびょうなT男は、ショックて、心臓発作をおこしたのです。
お葬式の後、K太たち親しかった友達が数人でT男の家をたずねました。お母さんは、友達がきてくれたからといってT男の部屋に案内してくれました。その時、K太はベッドの布団の上にスプーンが落ちているのを見て、内心ドキリとしました。
「あの夜、T男はスプーンを投げたのかもしれない。ベッドの上に落ちて音がしなかったのを、幽霊と思いこんでしまったのではないか。」
家に帰ってからもそのことが気になって、眠れませんでした。実は、この話はK太の作り話だったのです。そして、何を思ったのか、ベッドから起き出すと、台所からスプーンを持ってきました
12時。真っ暗な部屋の中で、K太は後ろにスプーンを投げ上げました。
「?????」
音がしない。
ハッと息を飲んで振り返ったK太の目の前に、スプーンを持ったT男が立っていました。
「K太、君が話していたのは、こういうことだったのか。」
END