ルークの自宅近くの繁華街の一角では若者グループ…クランズ、アンヌ、パディ、ジェフ、ハックたちがたむろしていた。
(ちぇ、コイツら…)
仲間たちを羨ましげに見ているハック。
クランズとアンヌ、パディとジェフはそれぞれ恋人同士。
なかなか、彼女の出来ないハックは1人、孤立した感じだ。
カップル同士でイチャ付く光景にハックは余計に気分を害するのだった。
ジェフと顔を寄せ合って語り合っていたパディ、遠くの或る人物に気が付いた。
「ねえ、なーにあのコ!?」
「どうしたパディ?」
顔を離したジェフ。
「今、通りの向こうを歩いてるコ。
チョット、見て」
パディが指差す方向に他の4人の視線が集まる。
視線の向こうにはフリルの付いた長めのスカートのドレス衣装に帽子姿の女の子が1人、トボトボ歩いている姿があった。
どう見ても、フツーじゃない。
「一足早いクリスマスの舞踏会にでも、参加するんじゃないのォ?」
「きっと、日本アニメのコスプレ大会でもあるのよ」
笑うアンヌとパディ。
一方の、ハックは女の子に目を輝かせている。
「あんな、お姫様みたいな格好をした女の子だ。きっと、すっごくカワイイんだろうな!」
ハックは1人で勝手に想像している。
「今がチャンスじゃねえのかハック?」
「ボーッしてないでよ、サッサとナンパして来いよ。あのコ、行っちまうぜ」
クランズとジェフがハックを促す。
「わ、分かってるよ!せかすなって!
俺、あのコをGETォ!」
やる気満々のハック。
大きく深呼吸した。
女の子に声をかけるだけなのに、ハックにとっては緊張する一瞬
なのだ。
彼の仕草に仲間たちがクスクス笑う。
────────
トボトボと歩くお姫様嬢。
ハックがやって来て、後ろから声をかけた。
「ハーイ彼女ォ!」
「!」
ピタッと足を止めたお姫様嬢。
「そのドレスと帽子…、とても似合ってる」
「…」
相手は振り返る事もなく、黙ったまま。
「今から、クリスマスパーティーに行くのかなァ?」
「…」
「も、もし良かったらサァ、一緒にお茶しなーい?」
「…」
首をかしげるハック。
(耳が聞こえないのかなァ?)
つづく