「行くのか?」
「うーん…。どうしようかと思って。」
義妹を足にまとわりつかせながらランスォールは言った。
「彼女、初めて会った気がしないんだよなぁ」
「なんだ?ランスにも青春が来たか〜?」
ラウフがイタズラっぽく笑ったがランスォールの方はそんな気には到底なれなかった。
「茶化すなよ。」
「ランス兄ちゃん…」
足にわとわりついていた義妹が不安そうにランスォールを見上げている。
「ランス兄ちゃん、どこかに行っちゃうの?」
義妹の小さな頭を優しく撫でながら言った。
「どうだろうな。」
「クリス、ランス兄ちゃんがいなくなるのやだけど、でもランス兄ちゃんがやりたいことあるなら、クリスワガママ言わないよ」
もう一度義妹の頭を優しく撫でてやった。
「うん。ありがとな。」
それから、ランスォールはまた迷っていた。それこそ夕食すら手につかぬ程に。「ランスォール、お話があります。後でわたくしの部屋まで来なさい。」
「マザー、話とは?」
「あなたが迷うとは珍しいですね。今までこんなことはなかったのに。」
そういえば、そうだ。
スリだってバレたからとやめようか悩んだことはなかったし、思えば何度か彼を養子に欲しいと言ってきた夫婦が結構いたが即座に断った。
「そう…ですね。」
「迷うならいっそ、一度挑戦してらっしゃいな。ダメなら帰って来ればいいわ」考えてみます、と言ってマザーリラの部屋をでた。