リグラはそれを手に取ったが、やがて、思い直したかのように首を振った。
「やれやれ…頭に血が回っておらんだようじゃな。今更これを詳しく知ってもどうにもなるまい。それよりも、今起こっている事象を検証しておく事の方が重要じゃ」
論文をデスクの端に置くと、リグラはコンロの上にやかんを置いて、剣で火をつけた。
「リグラ様は紅茶ですか?」
「無論じゃ。紅茶は頭をゆったりと癒してくれるからのう」
リグラはにやりと笑って、ルークの飲んでいるコーヒーに目をやった。
「コーヒーは頭をすっきりさせてくれるんですよ」
ルークもそれを見て、にっこりと微笑んだ。
「さて…これからはちと回転速度を速めていかねばならんな」
「そうですね。長引くと、相手は必ずや次の手を打って来るでしょうから」
「ならば、まずどこから手をつける?」
リグラはコンロの揺れる炎を見つめながら、カップを手に持って、お湯が沸くのを待っていた。
「ロザラムは泳がせておけばいいでしょう。思慮が浅い分、すぐにボロを出すはずです。それに…相手にとっても彼は捨て駒でしょうから」
「確かに…だが、あのロイという少年の従姉妹家族に関しては、どうする?」