「ようきたのぉ…」昔の面影はあの笑顔を残して、既に衰えていた。
病室の窓から柔らかい光が降り注ぐ。
「カケルやぁ…おまえに…わしの若い頃の話を…ゴホッ」
「光じぃちゃん?」手を握る力を更に込めながらカケルは光を見る。
「話、話には続きが…」
光はなおも話を続けようとする。
「光じいちゃん?いいから…ゆっくり休んでよ…」
カケルの心配そうな目を見つめながら光は口を開いた。
「退屈な日々を…過ぎる時間は…変わりのない…物語…」
「おじいちゃん？」
「私も光の戦士…誰だってヒーロー…心の扉を開けるだけで光は差し込む。」
力強く握られた手に更に力がこもる。
「誰でも光の戦士になれる…扉はすぐそこにある」
光の真っすぐな目がカケルの瞳を見つめる。
優しくて温かくて逞しい。そんな光の入った瞳だった。
ゆっくりと閉じられた瞳。カケルの心臓がゴクンと動いた。
ピーー…鳴り響く電子音…駆け付けた看護婦が何かを叫んでいる。
しかしカケルの耳には何も入って来なかった。
光は静かな眠りについているような眠りについたまま、二度と目を覚まさなかった。
そして、この日からカケルの平凡な日々が崩れ始めたのだった。
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