「ドジー博士!」
助手の青木が研究室に飛び込んできた。
「いい加減、その呼び方を止めてくれ、私がドジみたいだ。」
ドジー博士は、この研究所の博士で、本名は、土地田 幸夫(どじた ゆきお)。今年で49回目の誕生日を迎える。助手の青木と男2人で、小さな研究所で働いている。
青木はまだ20歳前半だ。
「昨日、テレビを見て思いついたんですけど。」
「何だ?」
ドジー博士は、どうせまた、ろくでもないことだというような顔をしている。
「音楽ですよ、音楽!」
「そんなもの、私は興味がない。」
「その音楽を聴いたとたんに、誰もが眠れるような音楽ですよ!」
「それを発明して、何の役に立つ?」
「世の中には、夜、なかなか眠れない人がよくいます。」
「馬鹿馬鹿しい、どうやってそんな都合のいい音楽を発明するんだ。」
「僕は発見したんです。ある一定の高さの音を組み合わせれば、人間を眠りにつかせることができる!」
青木には自信があった。
その後、青木は詳しいことを博士に説明した。ドジー博士の顔がだんだん真剣な顔に変わっていくのが、青木には分かった。
1週間後…
「完成ですよ、ドジー博士!」
「だからあ、その呼び方を止めろと言っているだろ。」
「早速、聴いてみますか。」
「失敗だったらもう、私は知らん。」
青木は、CDプレーヤーに『快眠メロディー第1号』をセットした。