* * * * * *
『行って来ま〜す!!』
『はい。行ってらっしゃい‥‥あっ‥奈央!!』
新学期最初の“行って来ます”に、
母があたしを呼び止める。
『なぁに?!』
『その生足。なんとかならないの?!
北海道は寒いんだから、本州のコの真似しちゃだめよ。』
『大丈夫よ。みんな生足だもん。
あたしだけじゃないし。』
『女の子は体冷やしちゃ駄目よ。
特にあなたは‥‥。』
母の心配そうな視線は、あたしの下腹部辺りに向けられている。
『うん。大丈夫だから。寒かったら毛糸のパンツはくし。』
毛糸のパンツ――
一昔前ならダサくて、そんなモノはいてるコなんていなかった。
でも、今は逆に生足のコ達のウケがいい。
『‥‥そう。分かった。時代を感じるわねぇ。お母さんの頃は長いスカートが流行ったわよ。』
『今は生足なのっっ!!じゃ、お母さん。遅刻するから行くね!!』
『はいはい。行ってらっしゃい。』
外へ出ると、昨日から降り続いていた雪が、すっかり止んでいた。
雪に反射した太陽の光が、キラキラ輝いていて、とても綺麗だった。
『よっ!!おはよーさんっっ!!』
後ろから声がした。
『おはよ。聖人。』
そう。今日は3学期初の2人での登校だもんね。
『聖人、よく起きれたね?!』
『ふあぁぁぁ‥‥‥マジねみぃ。
だりぃし、帰りてぇ―。』
あくびをしながら目をこする聖人。
『あはは。まだ学校着いてないよ。』
あたしは思わず笑ってしまった。
『じゃあサボるか?!』
『3学期早々?!それはマズいよ。』
『バカ。冗談だよ。』
ポンッ――
聖人の手があたしの頭に優しく触れた――
『あ‥‥痛っ‥‥‥。』
突然、あたしの下腹部に痛みの波が押し寄せて来た。
『何?!何処が痛いの?!』
心配そうに顔を覗き込まれると困るんですケド‥‥。
ただの生理痛だから。
『何でもないよ。気にしないで。』
母の言うとおりだ。
体を冷やすとロクなコトがない。