これは、あるいは僕以外の人には全くもって恐怖でもなんでもないかもしれない。つまりこうだ
僕の家の近くに、それほど大きくないが、かといって小さくもない商店街がある。いつも5時ちょうどになると、どこからともなく奇声が聞こえてくる。そして次の瞬間、商店街を『野菜を持ったおばさん』が風の様に駆け抜けていく。(1度だけ顔を見たことがあるが、その顔は半笑いだった。そして前歯が1本なかった。)その光景を見るたび僕はとてつもない恐怖と悲哀感におそわれる。全身の毛穴から嫌な汗が吹き出し、鳥肌が立ち、さらには身体が震え出す。それは1時間以上治らない事もある。おばさんは何処から来て、何処に行くのだろう。何を考えながら走っているのだろう。
だから僕は毎日5時には商店街に行かない事にしている。