「でやっ!」
ルイスは更に攻撃を加えるべく、ロイとの距離を詰め、剣を振り下ろした。
「つあっ!」
ロイはその一瞬に出来た隙を逃さず、ルイスの胴へ強烈な一撃を加えた。
「がっ!」
ルイスは防具越しに受けた衝撃に顔を歪めて、尻餅をついた。
「…ルイス…、何を焦ってるんだよ…」
「っ!」
ロイの言葉にルイスはぎゅっと唇を噛みながら、目を反らした。
ロイは呼吸を整えながら、汗を拭って、
「…僕も母親を亡くしてるから、少しはその気持ちが分かる。あの時は、自分が何もしてあげられなかった事が本当に悔しくてさ。だから、母さんの分も家事を頑張ろうって、焦って、失敗ばかりして、よく兄さんや父さんに迷惑を掛けたよ」
と、苦笑いしながら言った。
「…」
「大丈夫。僕に兄さんや父さんがいたように、ルイスには僕とリリーがいる。そして、姉さん達だって必ず生きてる。だから、今は一歩一歩、確実に成長していこう」
「…そうだな」
ルイスは頷くと、ゆっくりと立ち上がった。
「焦ったって、母ちゃんや父ちゃんが生きて帰って来る事はないんだしな」
「…ルイス…」
ロイはルイスの悲痛な声に、彼の悲しみの深さと、やり場のない怒りを感じずにはいられなかった。