<我が名は皇帝近衛騎士団団長エカチェリナ・テファロフ辺境伯!!>
突如現れた巨艦と銀色のWWは、上空100メートルで停止すると名乗りを上げた。
<現在、中国と我が国の国境に皇太子マカロフ殿下率いる【第一騎士団】と【第三騎士団】が展開している。準戦闘状態にあり、いつでも中国国内になだれ込む用意がある>
ざわっとワシントンが揺れる。中国軍に緊張が走ったのだ。
<聞け!!>
エカチェリナと名乗る女(と思われる)は一喝。
大音量のスピーカーで怒鳴ったのだから、ワシントンのビルがみしっと震えたように感じる。
<我々の敵はなんだ!?>
大きく手を広げ、天を仰いでエカチェリナは叫んだ。
<当初、我々が悪であったのは認めなくてはならない。月の交渉人であったレイチュル・ケネディを殺害した事は月から譲歩と余裕を奪い、開戦に踏み切らざるを得ない状況を作り出した>
月の外相レイチュル・ケネディを歓迎パレードに乗じて殺害したのはアメリカの某組織であり、それが月との戦いのきっかけになったのは明らかであった。
<しかし、太陽神を自称し、罪無き民を無差別に、無慈悲に焼き払い、高らかと勝利を宣言するこの身勝手>
【月】が使用した太陽兵器【TheGodOfDay】による大量破壊を批判し、エカチェリナは続ける。
<これを許して、何が地球人か!!>
そう言って、手に装備した長槍を中国軍に向ける。
<己の保身のみに走り、敵にしっぽを振るとは情けない>
【串刺しエカチェリナ】の異名の由来である細身の長槍が太陽に煌めく。
<誇りすら忘れた国。これ以上は見るに値しない>
長槍を装備した右アームを振り上げ、投てきの態勢に入る。
<愚かなる中華の友よ、断じよう>
WWとは思えない美しいフォームで長槍が投げられた。
ワシントン、否、全世界が見守る中、投げ下ろされた長槍は違うことなく
中国WW軍の【鉄兵】の一体に突き刺さった。
<爆ぜるがいい>
次の瞬間、突き刺さった長槍は轟音を上げ、凄まじい稲光を周囲に撒き散らし、巻き添えを食らった十体の鉄兵を道連れに砕け散った。
<絶対正義、神聖ロシア帝国の裁きを受けよ!>
彼女の宣言を待っていたかのように、空を埋め尽くしていた巨艦アレクサンドルの全武装が唸りを上げた。
五百を超える砲門、二百基のミサイル。
アレクサンドルは中国軍を容赦無く、砕いた。