私の母はとてもプライドが高い。
私は姉と二人姉妹だが、まだ幼い頃によく
『どっちかには医療に進んで貰ってもぉ一人には調理の道に進んで貰ってお母さんを楽させて』
や、従兄弟が結婚した際には
『家柄が釣り合わない。お嫁さんの友人たちは気品が感じられない』
などと呟いていた。
母の希望も虚しく私たちは各々進みたい道を選んだ。
姉は芸能界の裏方、私は旅行業界。
母親からしたら誇れるものではなかただろう。
でも私は仕事を心から楽しんでいた。
昨日母親からメールが届いた。
『１１月に奥入瀬渓流に行こうと思うんだけど』
と。
以前私が行き、両親に称賛した場所だったから嬉しかった。
幾つかの質問に答えると
『中学時代の友達に娘が添乗員やってるって言ったら、本人に貴方の娘さんなの？って言われた。自慢の娘だって答えたよ。』
と言ったらしい。
昔とは違い現在の添乗員のほとんどは派遣だし、資格も難しい訳じゃないけれど勤め始めると必ず何かの壁にぶち当たり、長く続けられない。
低賃金、労働時間の超過、休みが不定期、傲慢なお客さん。
私もなんどもアンケートを見て悔し泣きを経験したことか・・・。
正社員を望んでいた母だが今派遣の仕事を応援していてくれる。
何より私たち娘を心底愛してくれる。
自慢に思える娘に育て上げてくれてありがとう。
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