「もしもし、奪い屋だ。」
いつも電話に出るとこう言う。この電話に掛かってくるのは、全て依頼の電話だ。
「依頼なんだが。」
「何を奪う?1週間後には、お前は私に殺される。それなりのモノがいいぞ?」
「花だ。」
声からすると、50代の男性だ。そんな人から「花」という言葉が出ると思わなかった。だから私は、
「もしかして、ハナダという人の名前か?」
と訊いた。
たまに、何でも奪ってくれるということで、「命」を奪って欲しいという依頼がある。
「いや、フラワーの花、だ。」
「何でそんなものを?」
「悪いか?」
私は変だと思いながらも、この男の名前と住所、奪う対象の相手の名前と住所を訊いた。
「私の家は…。」
男の住所を言ったので、私はメモをする。
「相手の住所は…」
と相手の住所も口にした。相手の家には何度も入っているみたいだ。花の置いてある場所まで、簡単に教えてくれた。
かなり珍しい花らしい。
「じゃあ、明日の午後、お前の家に花を渡しに行く。」
私は受話器を下ろした。
翌日、私は依頼者の家に向かった。青い珍しい花を持って。
これを奪うのは実にたやすかった。鍵は最初から開いていたし人気もなかった。男の言った通り、花は、ドアを開けてすぐ右の靴箱の上に置いてあった。
早足で男の家に向かう。
ー続くー