坂を10分ほど登った。
「久しぶり。由紀。」
そう言うと俺は花と線香を供えた。
――――祭りの後…
「楽しかったね。来年もまたこようね!」
由紀は無邪気な笑顔で手を振っていた。
帰り道の交差点。
「ああまた来年も。」
俺も笑顔で手を振った。
これからずっと一緒にいたい。
これからずっとあの笑顔を守りたい。
由紀は左、俺は右。
「あの事を聞いたのは次の日の朝だったんだ。」
信号無視の車にひかれて、由紀が死んだ。
「俺が由紀の事、本当に好きだってこと……わかってくれてたかな?」
ポンッと雄太が俺の肩を叩く。
「最後は笑顔で帰ろうぜ。」
「あぁ。…じゃあ由紀また来るよ。また来年に。」
帰りの駅で見たちょっと遅め向日葵は……
帰りの駅で見たキラキラ輝く太陽は……
たぶんずっと俺を見てくれると思うから。