廃車置き場はビルの森の外れにある。人気は全く無い。灯りは月の光だけである。
ニット帽は廃車のボンネットに座って拾ってきた弁当を食べ始めた。
「なに、お二人さん、食べないのかい」
相当空腹だったらしく、物凄いスピードで箸が進んでいる。
「あたしの分食べないでよね」
金髪は欠伸をしながら言った。レインコートは自分の廃車を一生懸命覗き込んでいた。車内に何か居るような気がするが暗くて分かりづらい。
「あんたは本当に食べ物に執着がないね」
金髪は呆れたようにその姿を眺めた。
するとレインコートは漸く車内に居る何かの正体が分かり目を丸くした。
手招きをしているのを見て不思議そうに二人は廃車に向かった。レインコートが窓を人差し指でトントンと軽く叩いた。
「ほら」
後部座席に人が横たわっていた。
「…まさか」
三人は青ざめたが、確認くらいしておこうよ、とニット帽がドアを開けた。
ドアの向こうから細い足が見えた。
横たわっていたのは少女だった。綺麗な黒髪に赤いリボンの制服を着た容姿端麗な少女。微かに寝息が聴こえる。
三人はあまりに突然のことと眠る少女の姿に暫く見入った。