飛行機雲?

 2008-08-30投稿
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駅の改札口に李遼がいて、手を振った。白いTシャツにジーンズ。何だか申し合わせたみたいだ。
「雨ふっちゃったけど、
着いちゃえば関係ないか
ら。」
「うん。」
電車の窓に雨粒があたり流れ落ちる。心に降る雨は痛みさえ伴う。
「元気ないな、なんかあ
ったの?」
電車を降りて水族館に行く道すがら、李遼が聞いた。
「別に、何でもないよ。」
会話が続かない。今日は
キヨもいない。
「オレ、誘っちゃ悪かっ
たかな。」
李遼がぽつりと言った。
「違うよ、そんなんじゃ
なくて。」
必死に否定しながら、感情が押さえきれなくなった。
「李遼、あのね、裏サイ
ト書き込んだの、マイた
った。」
わたしは、声を上げて泣いた。李遼の胸にすがりついていた。李遼は、ひどく驚いていたけれど、黙って片手をわたしの背中に回した。李遼の胸の鼓動が聴こえる。雨がひどくなる。わたしの傘は放り出され、李遼の傘だけがわたしたちを守ってくれた。背中に回された手が、わたしの頭に移動して、ぎこちなく髪を撫でる。李遼は、ずっとそうしていてくれた。
少しずつ、李遼の温もりがわたしのささくれた心を癒していく。
李遼が好きだ。
マイを傷つける事であっても、わたしは、李遼を
ずっと好きでいたい。
李遼にそう言いたい。
でも、わたしにそんな価値があるんだろうか。
友達なんてうわべだけだと思ってた。それなのに失うと、こんなに悲しいなんて。
「オレ、木場と仲良かっ
たんだ。」
李遼の声に、顔を上げた。
「まだ日本語もろくに話
せなかった頃、陸上部で
一緒だったあいつは、オ
レの面倒をあれこれ見て
くれた。」
静かな声だった。
「あいつ、親が離婚して
からおかしくなって、部
活もやめて、オレは、あ
いつのやることについて
行けなくなった。」
寂しい目。
「木場にしてみれば、オ
レは裏切り者なんじゃな
いかな。だから、オレは
あいつの、好きなように
させてる。それであいつ
の気がすむんなら。」
かすかに声が震えてる。
「オレは卑怯だよ。友達
から逃げたんだ。」
わたしは、声もなく何度も首を横に振った。
李遼は、優しい笑顔を見せた。



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