RPG−3

たる  2008-08-30投稿
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「あたしはレイジャーン。レイって呼ばれてる」
慎重に立ち上がる私を気遣って腕をとってくれた女の子は、歩きながらそう名乗った。どこに行くのか分からないけど、私の中ではもう彼女は信頼できる人だ。私の気持ちが分かったのか、彼女にも最初のようなとまどった表情はない。
「私はカナ。助けてくれてありがとう」
「本当に驚いた。魔物でも出てたらどうするつもりだったんだ?むしろ最初は寝てるあんたがサパーかなんかの罠かと思ったんだよ」
魔物?サパー?罠?
目眩のする思いだが黙って聞くことにした。
「怪我はしてないみたいだけど」
レイがじっと私を見て言った。体を刺激しないように動いているのを不思議に思ったらしい。曖昧な返事でごまかしたが、追及されることはなかった。現れた何かのせいだ。
レイが立ち止まり、私も足を止めたが、それは正確にいえば立ちすくんだというものだ。
何を見たかといえば、後ろが透けて見える黄色と黒の混ざった液体みたいな何かが行く手にいたのだ。
「ひゃっ」
「馬鹿っ、声を出すな!」
レイが潜めた声で言ったがもう遅い。その前も後ろもない空中に浮かぶそれはくるりとこちらを見た(ように思った)。黄色と黒のぐちゃぐちゃした模様が動いた。吐き気と恐怖で座り込むと、レイが腰の剣を抜いた。
「まさかこいつを見たのは初めてか?」
言葉が出ずこくこくとうなずいた。レイは驚いたようだったが、それはこちらも同じだ。レイは毎日こんなやつを見ているとでもいうのだろうか。
「ふうん。異国の匂いがすると思ったけど、サパーを知らないとはね」
さっき言っていたのはこいつのことだったのか。百聞は一見にしかずと言うが、レイより先にこいつに見つかっていたら私はどうなっていたんだろう。
「なら倒し方も知らないわけだ。よく見とくんだよ」
「えっ?」
レイは剣を水平に持って、サパーを突き刺した。元々2メートルもあろうかというそれは、刺された次の瞬間、断末魔を叫ぶように3メートル4メートルに膨れ、そして消えるように小さくなって地面に落ちた。
「こいつは小さいからいいけど、大人が出てきてたら・・・おい、大丈夫か、おい」
真っ青な私にレイが駆け寄った。



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