僕は、空を飛べる高校生です。自転車が出せるスピードと同じくらいの速さで、空を飛ぶことができる１７歳です。
ところで、学校のみんなに、僕からお願いがあります。
いくら、僕が自由に空を飛べるからといって、家に忘れてきた教科書とか体操着とか部活の道具とかを、休み時間や放課後に「取りに行ってほしい」などと、暴力行為をチラつかせながら命令するのは、どうかやめて下さい。
あと、担任の君塚先生。自宅に忘れてきた恐妻弁当を、授業中にもかかわらず、生徒の僕に取りにいかせるのは、お願いですからやめてください。教育公務員のお給料が安いことは知っていますけれど、忘れてしまったのであれば、校内の購買で買うとかしてください。「奥さんに怒られる」とか、そういう泣き言を言って、僕を困らせるのは、本当に勘弁してほしいです。このまえの中間テストの成績が悪かったのは、週に３回も弁当を忘れてくる君塚先生のせいだと思います。
このように、ちょっとくらい空を飛ぶことができても、あまり良いことはありません。
まず、登下校の時に歩かなくなります。道路の構造を無視して、最短距離を飛んで行った方が早く帰れるからです。人間というのは、楽な方向へと流れてしまう生き物なのです。
歩かなくなると、脚力が衰え、しまいには自分の脚を使って動くことすら面倒になり、１７歳にして、慢性の運動不足になってしまいました。
そういえば、政府のみなさんにもお願いがあります。
特に、公安警察の方々。
いくら僕が空を飛べるからといって、非合法組織の秘密アジトを偵察させたり、某敵国の軍事施設内の見取り図を描かせたり、そういう危険な任務を、高校生で１７歳の僕に強制するのは、お願いですからやめてください。「キミが、ベッドの下や押入れの天井裏に隠しているモノを、キミのお母さんやツンデレの妹に教えるぞ。いいのか？」などという、古典的かつ効果的な方法で、僕を恐喝するのは、ほんと勘弁してください。
あと、最後に言っておきたいことがあります。
みなさん。人間は平凡なのが１番幸せなのです。僕のように、中途半端に空を飛べちゃったりなんかしちゃったりすると、ロクな青春を送れませんよ。本当に。
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