その日、私の学校では遠足が決まっていた。前日まで、遠足の事をすっかり忘れていた私は、ドタバタしながら当日を迎えていた。
家の前の桜の木に、行ってきますと言って、駆け足で学校に向かっていた。
桜がいるクラスとは、別々の行動であったが、お昼が終わり、自由行動の時間となると、みんながワラワラと動き出していた時、
「大和君!こっち!」
後ろから呼ばれて振り向くと、桜が手を振って私を呼んでいた。
いつもと同じように、二人で遊んでいたが、私は元気のない桜の姿に、最初は見てみぬ振りをしていた。
だが、しばらく様子を観ていても、一向に変わらなかった姿に私は、
「桜、身体悪いの?」
「え?なんで?」
気付いたのかと、思うような顔で答える。
「いつもの桜じゃない感じがするから」
「そんなことをないよ。普通だって、ホラッ」
明るく振る舞う姿が、一層、何かを隠してみえた。
私は今になって思うと、桜に問いつめた行動が、二人の関係を繋げたのでは?と考えてしまう。
二人を見ているかのように、桜の木からは、花びらがひらひらと舞っていた。