雨は、止む気配すらみせない。しかし彼らは、ただただ歩きつづけた。手を繋いで。 「雨、止まないな」 「うん、止まないね」 雨の中、彼と彼女は。 ただただ歩いた。 「まだ、雨止まないな」 「うん、まだ止まないね」二人の手から、すこし力が抜けた。彼は、何かを確かめるように。ゆっくりと手に力をこめた。するとすぐに彼女の手に力が、こめられた。 「ねぇ、手。離せないね」「ああ、なんでだろうな」二人の手は、もとからそうするために存在していたかのように。ぴったりと重なっていた。 「そろそろ、時間だな」 「うん、時間だね」 「もうすこしだけ、このままにさせて。一分でいいから」 「ああ、わかったよ」 二人の手が、離れたのは。それから三十分後だった。