航宙機動部隊前史後編・16

まっかつ  2008-09-02投稿
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ギャームリーグ三宙邦本国の背後に回り込んだガニバサのネオフリートが出現したのは、何と銀河元号一五四四年第二期七日(修正太陽暦四月七日)になってからであった。
当初の予定・一年半をそれは大きく超過していた。
勿論、それは絶対有り得ない事だと言う分けでも無かった。
人跡未踏の宙域を二千光年近くも制して来たのだ。
言わば、その莫大な遅れは人類史上最大の探険を成し遂げた彼等に与えるべき《特権》ではあったのだ。

だが、ここに疑惑が生じる。
何故なら、これ程危険かつ無謀な遠征を敢行したのにも関わらず、ネオフリートの損失は僅か一五%に留まっていたからであった。
つまり、遠征の困難さやアクシデントで足を取られたと言う説明は成り立ち難い。

まだある。
実は、非公式だが、ガニバサが迂回を試みていたと推定される方面から、しばしば敵襲や接触を報告する声が、確認されているのだ。
それは全て、単艦・もしくは小部隊による物であったが、事態を深刻に見たギャームリーグ大司令部は、本国後部宙域の防御体制の強化を検討している。
これは既に背後にまで到達したガニバサによる威力偵察では無かったのか?

極め付けは、いよいよ開始されたネオフリートの攻撃が、実に的確・かつ無駄が無かったと言う事実だ。
寝込みを襲われたギャームリーグの混乱振りは確かに酷い物だったが、だとしても、一早く造船廠始め主要軍事施設を一挙に同時多発的に襲撃し、しかもほぼ無傷で占領してしまうなど、軍事史上でも他に類例を見い出すのが難しい《大戦果》で、しかも、味方の受けた被害は僅か三00隻と言う、常識では有り得ない内容だったのだ。
事前に充分な下調べでもしたのだろうか?
確かにガニバサは情報を非常に重視する提督ではあったが、だからと言って、幾ら何でも敵の最も秘匿するべき最重要拠点の詳細な情報等、普通に考えたら手に入れられる筈が無い。
手段として考えられるのは、厳重に暗号化された敵の電子頭脳言語の完全解読か、さもなくば、裏切り者の存在だ。
だが、フリースユニオン中枢にすら不可能とされたそんな離れ業を、どうやって遠征中のガニバサに出来たのか?

この《疑惑の一年間》は、様々な憶測を呼び起こし、航宙史上最大級のミステリーとして、実に多くの議論や著作で取り上げられる事となる。



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