マイナス×マイナス 9

輪廻  2008-09-03投稿
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ベランダに立ち夜空を見上げながら、二人は意味もなく麦茶で乾杯した。
こんなに笑ってこんなに泣いたのは何年振りか、実穂は幸せを噛みしめていた。

「なんだか初対面とは思えないよ。やっぱりダンス見てくれてた時に無意識にヨージを見てたのかな。」

「俺はずっと憧れてました。実穂さんたちに。その時の仲間とはほとんどバラバラになっちゃって…。」

ここにも別れがあった。
実穂はみんながずっと一緒に居られない事実が悲しくなった。

ヨージを撫でて、まるで自分に言うように言葉を発した。

「みんな、元気だよ。きっと。」

ヨージの瞳が少し潤んだ。

高校生が友人との別れで泣くなんて…。
正直、実穂は偏見を持っていたのかもしれない。

「……悲しい?」

何も言わずヨージは実穂に首をもたげた。

泣いていた。

声を殺して泣いていた。
実穂は言葉も出さないヨージを抱き寄せることしか出来なかった。
「…。」

「…実穂。さ…」

「実穂で良いよ。……なぁに?」
「……格好悪いとこ見せちゃって…。」

「そんなことない。」

「……良い奴らだった…。」

「また会えるよ、必ず。」



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