そのころ、立ち尽くすメレディスとハリソン警部の前に、やっと到着した消防団が現れた。
「こりゃひどい・・・」消防士の一人がつぶやいた。
燃え盛る炎に包まれた病院は、“手遅れ”としか言いようがない姿だった。
ごうごうと揺らめく赤と黄の光を唖然とした顔で受け止めることしかできなかった。
「なにつったってんのよ!」
怒りを涙ながらにぶつけるメレディス。
「中に人がいるのよ!!ウィルが、ウィルが中に!!」
消防団は彼女の剣幕に後退りしたがすぐに炎の中へと飛び込んだ。
地獄のように灼熱の空間とかしたその景色。崩れゆく木材。飛び散る火花。そしてなにより恐ろしいそれは、化け物と化した不審者の男とは比較してはならない恐怖心を抱くことができた。
それは、グロテスクなデフォルメでもなく、鬼のような強靭さもなかった。
そこに在ったのは、1人の青年だった。地獄のような景色に火傷ひとつ負わず立たずむ姿は違和感と言う名の恐怖が待っていた。
紅い目をした青年の恐ろしさ。
「お前の力はいったい・・・!?」
化け物が問う。
青年・・・ウィルは、笑った。
「俺の力は、くうきだ。」