さっきから、あたし達の側に立っていたユカは、
あたしと聖人の前を素通りして行くのだと思っていたんだケド――
『‥‥奈央‥‥‥。』
ユカに久しぶりに名前を呼ばれて、ビクンとしたあたし。
『え?!なぁに?!ユカ。』
返事をしたあたしもユカの名前を久しぶりに呼んだコトに気付いた。
『あ、あたしさ‥‥奈央に酷い事いっぱいしたし、
今更許して欲しいって言っても無理だって分かってるケド、
さっき、渋川にああ言わなきゃ後から絶対後悔するって思ったんだ。
だから言った。
それに‥‥‥
あたしも“腐った大人”になりたくないから。』
それだけ言うと――
ユカは、ニコッて一瞬だけ笑った。
あたしも笑った。
『秋田谷―――』
ふとその時――
あたしの横に立つユカに、聖人が呼びかけた。
『え?!何?!』
呼ばれたユカが聖人の方を向くと――
『さっきは、サンキュ。』
聖人も笑った。
『一応、幼なじみとしてっっ!!』
ユカは、そう言ってあたしの方を見て、
ペロッて舌を出した。
そっか。
ユカと聖人は、幼なじみだったんだよね。
ユカだって苦しんでたんだ――
ユカだって聖人のコト――
好きだったんだよね――
ユカはもう――
聖人のコト――
何とも思っていないのかな――
あたしがユカにされた仕打ちと同じ位、
ユカも片思いに苦しんでいたんだよね――
“ヒトノキモチノワカルヒト”
――に、あたしはなれるかな―――\r
自分の今の幸せしか見えなくなって――
“ヒトノキモチガワカラナイヒト”
――になりかけていないかな――
今日のコトは、本当にありがとう‥‥‥ユカ――
いつか、笑って過ごせるトキが――
また来るよね?!
また、前みたいに戻れるトキが――
来るよね?!
また、前みたいに戻れたらいいね‥‥。