友達

匿い屋  2006-06-05投稿
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私はいつも一人だった。
学校では皆から無視されるし、家族は母だけなのに夜遅くしか帰ってこなかったから。

その日だって、いつもと同じだった。
苛められるのに耐えきれなくて泣きながら家まで走って帰った。
漏れる嗚咽を必死に抑えようとしても、止まらなかった。
悔しくて悲しくて仕方がなかった。
ソファーに突っ伏して泣いていた。
「バチッ」
何かが弾けたような音がした。
「…何だろう」
鼻を啜りながら私は音がした方を見に行った。
トイレの方だ。
「バチッ…バチッ」
また、音がした。
「何なんだろう…」
こんな音聞いたことがない。
ゆっくりとトイレに近付いて、思い切りドアを開けた。
特に変わったものは見当たらなかった。
「…気のせい?」
ハッキリ聞こえた筈何だけど…。
いつまで経ってももう音がしないので、気のせいだったと思うことにした。
ドアを閉めてトイレから離れた。
刹那。
笑い声が聞こえた。
微笑み掛けるような拙い声で。
驚いて反射的に振り返ってみる。
さっき閉めたはずのトイレのドアが開いていて、その下方に指がドアを掴むように掛かっていた。
「ひっ…」
変な声を出して尻餅をついた。
徐々にドアが開いていき、その顔が見えた。
女の子だった。
微笑を浮かべ、時折痙攣していた。
私は尻餅をついた儘、後退っていた。
その状態で女の子は動かなくなった。
私も何故か、動くのをやめてその女の子を見詰めていた。
見詰め合った儘どの位経ったのだろうか。
「只今〜」
母の声がした。
途端に女の子は、微笑みながらドアから手を離して中に消えて行った。
「あれ?まだ起きてたの?」
母が能天気な言葉を吐き捨てて、その場を離れた。
私はその後、ふらつく頭を必死に押さえながらすぐに寝に行った。

相変わらず、私は学校で苛められている。
でも一つ変わった事がある。
友達が出来たのだ。
名前も知らない、友達が。

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