「くうき・・・・?」
不審者の男は首をかしげた。
ウィルの眼光が開く。
「・・・!?」
男は、異変に気付いた。さっきまで、気にもしていなかった呼吸が、徐々にしづらくなっているのだ。気のせいではない。刻々と薄れていく空気を乱れた呼吸で吸おうとするが、頑張れば頑張るほど、苦しみはましていった。
「そう、“空気だ”。極端に言えば、俺たち人間の今を生きていくための生命維持装置のようなものだ、空気ってのは。わかるか?空気の力というものが。おまえは刻々と死に近づいてるんだ。」
先刻まで誠実だったはずの青年は、怒りで煮えたぎる恐ろしい人間と化していた。いや、こう言うべきか。
恐ろしい、ノイザーと。
「んぐっぐ・・・っ」
男の口からは大量の唾液が垂れ、白目を向きながら、なにかをウィルに伝えようとしていた。
「命乞いなんて無駄なことはするな。」
冷ややかにウィルは言った。
男は、狂ったように、人間の姿に戻ったり変化したりの繰り替えしを始めた。「こんなことしなきゃ、俺たちきっと、いい仲間になれたのに。でもお前の罪を俺は許せない。だから、苦しんで、死んでくれ。」
ウィルの目から、紅い涙がこぼれた。