彼らの笑顔

ぷ〜  2008-09-05投稿
閲覧数[466] 良い投票[0] 悪い投票[0]

僕の通う高校は俗に言う「荒れた学校」だ。喫煙や飲酒をする生徒もいれば、財布を盗んだり物を壊したりする生徒もいる。
全校集会などをやると、イカツイ頭やくねくねパーマが連なっててどこかのライブ会場ではないかとさえ思えてくる。

そんな空間にいるのがイヤだった。
もちろんマジメな生徒だっていないわけじゃないし、気の合う友達だっている。でも乱れた奴らがふんぞり返るような所にいたくはなかった。奴らを世の中の汚点とさえ思っていた。
入学してしばらくは早く時間が過ぎることを願っていた。

しかし人間は慣れる生き物なのか一年も過ぎると荒れた学校風景も見慣れたものになった。
突然窓の外でイスが降ってきても驚かない、ある意味「鋼の精神」のようなものを手に入れた。これを手に入れたことは良いことだったのか悪いことだったのかいまいち判断できない。
そうして嫌っていた空間に溶け込んでいくうちに奴らのことがだんだんと見えてきた。
奴らは…いや、彼らはたぶん道に迷ってるだけなんだとおもう。
今までは小学校、中学校と義務教育のレールを歩けばよかっただけだった。なのに急に高校に入って「辞めたければ辞めればいい」と突き放され、将来なにをするかまで決めなければならない。僕だって具体的な将来をイメージできてない。無重力のような浮遊感と先の見えない未来にしりごみだってしてしまう。不安をまぎらわしたり、現状から逃げたくだってなる。
そうして同じ道に迷った仲間と自分を比べあい、今の自分は許されると言い聞かせ、余裕な素振りを見せて今をあがいているんじゃないかと思う。
みんな将来にはなにかしら不安を感じてるはずだ。
彼らも僕たちも何も変わらない今を生きてる高校生だ。優劣なんてどこにもない。

学校で彼らはとても楽しそうに笑っている。ふざけあったり、ヤンチャなイタズラをしたり。思わずつられて一緒に笑ってしまうこともある。まだ少し幼さの残る顔でいっぱい笑っている。

でも、世の中は笑っているだけの人間を認めたりはしない。
いつかこの笑顔はなくなってしまうかもしれない

そう思うと僕は彼らの笑顔を見てるのが少し辛く思えてくる

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 ぷ〜 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ