夜の街。無数の暗闇が、いくつかのライトで照らされる。そこでは何もかもが淡くなるので、フランケンシュタインが歩いていたとしても、誰も気付きはすまい。だが僕は気付いてしまった。
仕事が早めに終わり、街をブラついていた。居酒屋の先を曲がろうとした時、僕は大男とぶつかった。
「すみません」大男は言った。
「…」僕は口をきく事ができなかった。その大男はどこからどう見てもフランケンシュタインなのだ。
「どうかなされましたか」フランケンが言った。
「フランケンシュタイン」僕は言った。これ以外の言葉が出てこなかった。
「はい」フランケンがこたえた。「私はフランケンシュタインですが、それがどうかしましたか」
「…」どうしても言葉が出てこなかった。
「何も不思議な事ではないではありませんか」誰もフランケンの方を見たりしなかった。「一昨日だって、ここの居酒屋でドラキュラと一緒に飲んだんですが、帰りの駅でメデューサに会いましたよ。あなたたちが我々の存在に気がつかない方が不思議でならない」
僕はぶつかってしまった事を詫びて、そそくさとフランケンの前を去った。
たまたま、この街にそういった連中が多いのだろうか。僕はその日は眠る事ができなかった。