写真を見ながら、当時の自分を振り返ってみる。
そこで感じたのは、当時の桜が、私にとっての唯一人の女性なのだと分かる程、彼女の写真だらけだった。「お父さん、どうして同じ女の子ばかりの写真なの?」
私の隣で同じように見ている息子が言ってくる。
「お父さんの初恋の人だからかな?」
私の言葉を理解したのか、「じゃあ、お父さん。その人の事、まだ覚えてる?」息子に言われて少し考えるが、
「もちろんさっ、忘れる事なんてできないよ」
そう、忘れる事なんて出来る記憶と、出来ない記憶があるものだなと、つくづく感じる。
あの瞬間だって、まだ覚えている。
手に取った写真から、次々と思い返される、当時の記憶に私は戻って行く。