「ソータぁ、ごめんてー」
5時間目のチャイムを合図にみんなが戻ってきた。さっきから謝る声がするのは告白シーンを覗いたことをソウタが怒ったらしい。まあ、ソウタのことだからすぐ笑ってまた冗談とか言い出すだろうから心配ないけど。みんなも学ばないとだめでしょ。
「河内マナちゃん、可愛かったでしょ」
「え?うん、そうだったかも」
少し赤くなってソウタが答えた。何十回と告白されてるくせに、ソウタは未だに照れるは噛むはの初々しさが抜けない。それが良いところで、ふられてもダメージが軽減される。なんて。経験者の一言。
ソウタが話題を変えて、今は来週からの試験の話。王子様だって勉強は苦手。今出されている古典の復習プリントもほとんど埋まってない。
「俺やばいかも、今回はまじで」
机に頭を置いて情けない声を出した。テストの度に言って聞き飽きたセリフだけど、いつも明るいソウタが言うと新鮮に感じるから不思議。
1年の頃は、この言葉を聞いてノート貸そうかとか一緒に勉強しようとか周りが言ってたけど、最近ではそんなふうに言う子は少ない。いつもソウタが断るから。しかも私を出して。『ありがと、でもハナに教えてもらうから』ってね。勘違いしてもおかしくないかもね。周りも私も。
付き合わない?
私がそう言った時、ソウタはどんな顔したっけ。なんて答えたっけ。そして私はどうしたんだったっけ。
なんてとぼけたって忘れてるわけないんだけど。だけど、思い出せば思い出すほどおかしいなって思うんだよね。
だって。
だって付き合わないかって聞いたとき、ソウタは今までにないくらいの笑顔をになったんだよ。作ったんじゃない、飛び出たっていう笑顔。
無理矢理その笑顔を押し殺して、でも抑え切れずに満面の笑顔が見えてた。
なのに。
なのにソウタは『ずっと友達でいたい』って言ったね。
ねえ、分かんないよ。
ソウタ。
ずっとって、何?