「はよ」
「びびったあ」
聞き慣れない低い声に心臓が跳びはねた。ほとんど毎日登下校を共にしてる友人・マイだ。最近かけたパーマが可愛くてマネしたいなって考えてたところに本人が出てくるから余計驚いた。今日はゆるく2つに結んでる。
マイは背が高くてスタイルもいいから何でも似合う。なのに今日は変。服装はぐちゃっとしてるし化粧も雑。アイライン太すぎて超ギャルみたいになってるし、髪も時間ないから結んだって感じ。
「ぶっさいくな顔だねー」
「ん。眠すぎ。勉強してた、夜中」
「えっ!」
あまりにも驚いて大声が出た。恥ずかし。
「勉強ってどうしたの?何で?」
「来週からテストじゃん」
そう言われたらそうだけど、私が言いたいのはそうじゃなくて。
「マイが勉強してるなんて初めて聞いた」
「はっはー、あたしも初めてしたっての」
テンションがおかしいのは慣れないことをしたからか。そういえばちょっとクマできてるかも。コンシーラー使う?って聞いたら助かるって男前に言われた。ちょっと面白い。
チリーンと遠くから音がして、振り向いた時には自転車はすぐそこだった。ソウタだ。
「おはよ。あ、待って」
通りすぎたソウタがピタリと止まった。ブレーキ強すぎじゃん。
「マイが寝不足でやばいの。乗せてったげて」
「辞退する。王子様と登校なんて朝からハードすぎ」
「何言ってんの。早く行って寝ときなよ。ソータ、よろしくねー」
「俺なんも言ってない!いいけどさ・・・ハナ1人でいいの?分かった。じゃ、教室で」
ぼんやりしたままのマイを乗せたソウタの自転車を見送った。マイがいないのは寂しいけど、1人が嫌ってことはないから。それに私って友達思いだし?
少し歩いたところで声をかけられた。名前は知ってるけど話したことあったっけ?って感じの男子。隣のクラスかな。
「え?」
「1人みたいだし・・・」
えか。この人、一緒に行こって言った?話したこともないのに?ないないない。何考えてんのと思ったけど断り方が分からず曖昧にうなずいてしまった。
気まずーって思ってたけど、しゃべってみると面白い。初対面らしい緊張感はあってもなかなか打ち解けてるし。向こうも名前知ってたし。
教室入ってから気づいたけど、私達かなりいい感じで登校しちゃったね。
桐山タイチくん。
また話したいなー。