「体に悪いよ、そんなんじゃ。空いてるならディナーつきあってくれる?」
「しょうがないなぁ…なんてね(笑)、いいのかい?」
「手伝って貰ったお礼!いつもありがとう」
PM10:00
「ただいま」
マットとの食事をすませてアパートに帰ると、既に部屋の明かりはついていた。
「おかえり、架月」
シェアメイトの中国人、イ・レオン(28)が下着姿に顔パックという出で立ちで出迎えてくれた。
「遅かったわね。搬入は終わったの?」
「うん、マットと食事してたんだ。手伝ってもらったし。」
レオンは日本に住んでいたことがあり、日本語が流暢だ。加えて英語、フランス語をも使いこなす才女で、ルックスもいい。彼女はジュエリーデザインの勉強をしながら某有名ブランド店で働いている。
「架月、前から言おうと思ってたんだけど、その気もないのに誘うの辞めた方がいいわよ。」
私は腕時計を外しながらレオンをみた。
「どうして?手伝ってくれた友人を食事に誘うのは普通でしょ?よく知ってる仲だし、今後の話もききたいし。その気があるとかないとか、そんなんじゃないよ」
そう言うと、レオンはため息をついた。
「貴方にもプライドはあると思うけど言わせてもらうわ。貴方、これだけ一緒にいてマットの気持ちに気付かないなんて、よっぽど恋愛経験が少ないか鈍感かのどちらかよ。あたしは自慢は出来ないけど、恋愛経験は人よりも多いから見てればすぐわかるの。」
「そんなことない、考えすぎだよ、レオン。」
「もう!子供なのよ、架月は!!後で痛い目みるわよ?!」
「は〜い。じゃあ私、シャワー入るね。おやすみ。」
レオンは、『まったく』といった感じで私を睨んだ。