ユカは、その場に呆然と立ち尽くしていた――
多分――
ユカの耳に、クラスメイト達の声は聞こえていなかった――
ただ、ボーっと立ち尽くしていたのは、
ユカだけではなく――
あたしも同じだった――
信じられなかったんだ――
ユカの口から出た言葉の数々が。
勿論――
それは、ユカ本人も思ってるコトだと思う。
だって――
それは、ここにさっきから立ち尽くしているユカ本人の姿が物語っていたから――
『‥‥ユカ?!』
あたしは、この場の空気の流れを断ち切ろうと、
ユカに話し掛けてみたんだ。
『‥‥奈央。』
か細い声でポツリとあたしの名前を呼んだユカ。
フラッ―――\r
その時、ユカの体が前後によろめいた――
『ユッ‥ユカッ!!大丈夫っっ?!』
あたしは、ユカに駆け寄り、ユカの体を支えた。
『おいっっ。秋田谷?!』
聖人も直ぐに手を貸してくれた。
ドサッ――
ユカは、あたしと聖人に支えられながら、
その場に崩れ落ちた――
ユカは、顔面蒼白だった。
『ま、聖人。ユカをおぶって、保健室まで連れて行ってあげて。』
『秋田谷、ゆっくり立てるか?!気持ち悪くないか?!』
聖人の問い掛けに、
ユカは、コクンと頷き、
そして――
聖人の背中におぶさった。
ユカをおぶる、聖人の横に、
あたしも一緒に並んで歩いた。
『奈央。今、保健室にはタツヤと渋川がいる筈だ。
渋川の事だから、秋田谷が俺の事を庇って“タツヤが先に手を出した”と言った事を、タツヤ本人に確認しているかも知れない。
タツヤは、秋田谷に恨みを持つ可能性がある。要注意だ。』
『うん。あたしも、そう思ってたんだ。
聖人。何かあったらユカを守ってあげて。お願い!!』
『ハハハ。おぅ。任せとけっっ。
どうやらコイツ‥‥秋田谷も、“奈央ちゃんマジック”にかかっちまったようだな?!』
聖人は、そう言って、ケラケラ笑った。